ムスッとしてロイは階段を下りていく。一歩遅れてロイの後から階段を下りながらハボックが言った。
「それにしても見事な悲鳴だったっスね」
「煩い」
「オレのこと呼ぶなんて、可愛いんだから」
「煩いと言っているだろうッ!!」
ハボックの言葉にロイは大声を上げるとキッとハボックを睨みつける。だが、赤い顔で睨んだところでまるで迫力はなく、ハボックはニヤニヤと笑いながら言った。
「ま、とにかくオレの勝ちっスから。文句ないっスね?」
「……」
言いたいことなら幾らでもあったが流石にそれは飲み込んでロイはプイとそっぽを向く。一階まで下りるとそのまま外へと出ていこうとするロイをハボックは引き留めた。
「待って、大佐。ライター取ってこないと」
院長室に置いたままだと廊下の方へ歩き出すハボックの後を、ロイは仕方なしについていく。一刻も早くここから出たかったが一人で行くのも嫌で、ロイはハボックの後について院長室に入った。
「これこれ、これがないと煙草が吸えねぇ」
ハボックは古い机に置かれたライターを取り上げポケットに突っ込む。後からついてきたロイを振り返って、ハボックは言った。
「で、勝った方のメリット、覚えてます?」
「……そんなの、帰ってからでいいだろう?」
忘れたわけではないが、今ここで話すこともないだろう。一刻も早くここから出たくて言うロイにハボックはにっこりと笑った。
「今ここで聞いて欲しいんスけど」
「……別にここで言わないからなかったことにするなんて言わないぞ」
正直そんな気持ちがどこかにないと言ったら嘘になるが、そんな事を言えば後々なにを言われるか判ったものではない。悲鳴を上げてしまっただけでも不覚をとったと己に腹が立って仕方ないのに、これ以上の恥の上塗りは避けたかった。
「まあいい、なんだ?」
言うなら言うでさっさと言って欲しい。そう思って尋ねるロイにハボックがにーっこりと笑った。
「シましょ、ここで」
「……は?」
言われたことが判らずロイはキョトンとする。その一瞬の間にハボックはロイを引き寄せて言った。
「だから、ここでシましょう。普段とちょっと趣向が変わっていいっしょ?」
ハボックはそう言うとロイの返事を待たずに引き寄せた体を古いソファーに押し倒す。ぱふんと体がソファーに跳ねて、ロイは慌ててハボックを押し返した。
「なにを言い出すんだ、お前はッ!!」
「うん、だからナニしましょうって」
「ふざけるなッ!!」
楽しそうに言って圧し掛かってくる男をロイは必死に押し返す。
「なんでこんなところでシなきゃならないんだッ!家に帰ってからでいいだろうッ!」
こんな薄気味悪いところでセックスするなんて考えられない。なんとか逃れようとジタバタと暴れるロイを容易く押さえ込みながらハボックが言った。
「あ、もしかしてこの場所が怖いんスか?」
「ッ?!べっ、別にそう言う訳じゃッ!」
ギクリとしながらもロイは即座に否定する。そんなロイにハボックは楽しそうに言った。
「大丈夫、怖いなんて考える暇もなくしてあげるっスから」
ハボックはそう言うとロイが何か言う前にその唇を塞ぐ。深く合わさる唇にロイは目を大きく見開いた。
「んっ……んん───ッッ!!」
逃れようと首を振ろうとするが、ハボックに顎をしっかりと押さえられてどうすることも出来ない。入り込んできた舌に己のそれをきつく絡め取られ口内を嬲られれば、濃厚なキスはロイの思考を甘く蕩けさせた。
「ん……ッ、んふ……や、あ……ッ!」
それでもまだ何とか逃れようとロイはハボックの腕の中でもがく。可愛らしい抵抗を楽しみながらハボックはロイの白い首筋に唇を押し当てた。
「アッ!」
押し当てた唇で強く吸い上げればロイの体が震える。ハボックは耳の付け根や喉元に幾つも紅い花びらを散らしながら、ロイのシャツのボタンを外していった。シャツの前を開けば薄闇に白い肌が浮かび上がる。胸を彩る薄色の飾りをハボックは口に含み舌先で転がした。
「やっ!やあっ!!」
一つを舌先で、もう一方を指で捏ねられてロイはふるふると首を振る。ハボックに抱かれるようになって開発された乳首は、今ではもっとも感じる場所になってロイに快楽をもたらした。
「嫌っ、ハボック!」
嫌だと言いながらもその声は甘く濡れている。指先でグリグリと押し潰す一方、もう一つをチュウときつく吸い上げればロイの声が甘さを増した。
「やあんっ」
「ふふ……胸弄られんの、好きっスね、大佐」
乳首をしゃぶりながらそう言えばロイの体がビクビクと震える。刺激に薄色だった乳首が真っ赤に熟れて、ハボックはうっとりと笑った。
「サクランボみてぇ……旨そう」
ハボックはそう言うと乳首に歯を立てる。クッと食い込んでくる歯にロイは身を仰け反らせて喘いだ。
「あん……ふ、……やだ、ハボック、こんなところで……っ」
喘ぎながらもロイはそう言って首を振る。見上げればハボックの肩越しに闇に沈んだ天井が見えて、なんだかその暗がりから誰かが見下ろしている気がしてならなかった。
「まだ集中出来ない?」
どうやら思っていたよりずっとこの肝試しはロイにとって怖かったらしい。いつもならとっくに溺れ始める頃なのにとハボックは首を傾げる。ロイのボトムを緩め、既に熱く息づいている中心を大きな手でキュッと握り締めた。
「ひゃあんッ!!」
その途端ロイが甘い悲鳴を上げて背を仰け反らせる。突き出された胸の飾りを舌で嬲りながら、ハボックは手の中の楔を扱きだした。
「やっ、アンッ!……あ、ハアン……ッッ!!」
弱い場所を同時に攻められてロイは身悶える。きつく吸われて突き出した胸を甘く噛まれ、蜜を垂らす鈴口を捏ねられてロイの視界は甘く霞んでいった。
「ん、んっ……ハボックぅ」
ビクビクと組み敷くロイの躯が震える。ハボックはロイのボトムに手をかけると下着ごと引きずり下ろした。剥き出しになった細い脚を大きく開かせその中心に顔を寄せる。たらたらと蜜を零してそそり立つ楔を、ハボックは下から上へと舐め上げた。それと同時にたっぷりと蜜を溜め込んで重くなった袋を揉みしだく。カリの部分を舌先で擽るように舐め、先端の小さな穴を押し開くように舌を押しつければ白い脚がピクピクと震えた。
「ああ……っ、んふぅ……ッ」
込み上げてくる射精感をロイは指を咥えてこらえようとする。だが、執拗に攻める指と舌の前では、そんな抵抗などなんの役にも立たなかった。
「く、ぅっ……ダメっ、出ちゃう……ッ」
ロイは激しく首を振り、股間に顔を埋めるハボックの金髪を鷲掴む。ハッハッと浅い呼吸を繰り返してこらえようとするロイの努力を嘲笑うように、ハボックはロイの楔を深く咥えてきつく吸い上げた。
「ッッ!!あ……アア───ッッ!!」
ロイは甘い悲鳴を上げてハボックの口内に熱を放つ。ハボックはなだれ込んできた青臭い液体をゴクリと喉奥へ流し込んだ。